物語好きのブログ

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幻想的でどこか奇妙な世界観の映画「シザー・ハンズ」

シザーハンズ(特別編) [DVD]
この世界観はなかなかクセになる。
少し前に観た同監督の「ビッグ・フィッシュ」がとても良かったので、このシザーハンズもきっと素晴らしいに違いないと勝手に期待を膨らませつつ鑑賞した。
相変わらず期待に応えてくれる内容だったので満足。

あらすじ

丘の上にあるお化け屋敷のような建物に住む発明家のおじいちゃんがある発明をした。それはほぼ完璧な人造人間であった。その人造人間の名前はエドワード。しかし、完全に人間になる前に発明家のおじいちゃんは死んでしまう。そのためエドワードは両手がハサミのままに生活することを余儀なくされる。それ以降、彼はひっそりと孤独に暮らしていた。
そんなある日、彼のもとにセールスウーマンのペグが訪れる。彼女は孤独な彼を受け入れ、自宅へ招き家族と共に暮らし始める。そんな中、彼はペグの娘であるキムに惚れてしまう。

感想

どこか童話めいた雰囲気の冒頭から物語は始まる。
ベッドで眠りにつこうとする少女がおばあちゃんに話しかける。
「どうして雪が降るの?どこからくるの?」
おばあちゃんはどこか遠い目をし、少女にある物語を話し始めた。それが本作の「シザーハンズ」となる。

エドワードのキャラクターがどこか危なっかしく、観ていてハラハラした。だがその危なっかしさがまた良い味を出していて、危なっかしさと心地良さを同時に内包している魅力的なキャラクターとなっている。
エドワードは両手を使ってまともに食事を取ることができない。できることは切断することのみ。そんな彼はその両手を人の為に使う。庭に生えた草を刈り取り可愛らしい動物の造形にしたり、近隣の住民達の髪の毛を巧みに散髪する。そのシーンを観ているとなんだか散髪に行きたくなった。
不器用ながらも人のために努力するのは、彼の持つ優しさが故の行動だ。しかしその優しさ、純粋さを利用され彼は人間に大きく傷つけられたりもする。それでも彼は人間に騙されようとも懸命に人の役に立とうとその手を使い続ける。その姿は観ている人の心を打つ。
本作の一番の見所のシーンは、エドワードが氷塊を巧みに削り舞い散った結晶の中をキムが踊るシーンだ。幻想的で美しく、人間とエドワードとで起きていた悶着を見事に浄化している。たとえ氷を削ろうとも実際の解決には至らない。しかし彼はそんな諍いになんら興味がなかった。ただ自分にできることをやり遂げる。それが彼の矜持でもあり、夢でもあったからだ。

不器用だが真っ直ぐな彼の姿、その運命に心が動かされた。