月光
「―――人はどうして人を殺すんだろうね?」
「―――-そうね」
「―――きっとそんな気分だったんだわ」
モノクロの景観に踊る、カラフルな傘。
その描写が色鮮やかに感じられた。
あらすじ
退屈な日常から抜け出したいと思いながら毎日を過ごすシニカル男子・野々村。
ある日、彼は美人で成績優秀、ゴシップが絶えない謎多きクラスのアイドル・月森葉子のノートを拾う。
そんなアイドルのノートからはみ出した紙切れには彼女のイメージとは程遠い言葉─
「殺しのレシピ」という見出しが書かれていた。
思わず持ち帰ってしまった彼は翌日、月森に探し物がないかと尋ねるが、
彼女からは「いいえ」という返事。そして数日後、彼女の父親が事故死する……。
感想
たまたま部屋に埋もれていたのを発見して、「そういえば読んでなかったな」と数行読み進めた。
気づくと最後まで読みきってしまった。面白い。
ミステリとライトノベルの雰囲気が混ざり合っているようなストーリー構成になっており、両方同時に読みたいって人にはぴったりなのかもしれない。
ミステリ?と疑問に思うところもあるので、細かいことは気にせずに読むのがベストかと。
一切かかわりの無かった二人が「殺しのレシピ」といった要素でつながりを持ち、そこから
二人の関係が深くなっていく。
ただしどちらも純粋な好意から関係が深くなるわけではない。
野々宮は「レシピ」を拾ったことにより生じた月森への好奇心から接触を試みる。
逆に月森は野々宮が「レシピ」を拾ったんじゃないかと疑問に感じ、接触する。(実際には違うが)
野々村と月森との会話シーンがなかなか良い。
お互いが探り合っているような緊張感とでもいえばいいのだろうか。
自分の持つカードを切らず、どうすれば相手にカードを切らせるか。
会話の中にそういった相手の心理の読み合いが感じられた。
完全犯罪とは、完全に、綿密に、徹底的に練られて行われるものではない。
偶然―――人の予想の範疇を超える出来事を利用して行われるべきだ。
完全犯罪とは偶機を利用するべきなのだろう。
宇佐美が物語に関わってこなかったのがちょっと残念。